December 17, 2019

“POLARTEC POWER WOOL GRID” ベースレイヤーのお話し

ベースレイヤーってそんなに大事?
◯ートテックで十分じゃない?


そう言われると確かにその通りで、普通のゲレンデはレストハウスやカフェなどの設備が整っているから、寒くなったら中に入って休憩したり英気を養えば良い。
そもそも気温も標高も低い山ではアウターの中に何を着ていていても、(作り手としては不謹慎な発言ですが)それほど問題は無いと思います。
特に気力も体力も旺盛な若い人にとっては、高額な肌着なんて無用の長物なのかもしれません。

そうは言っても、やっぱり機能的な肌着(ベースレイヤー)が必要な人、あるいは機能的な肌着を着ていた方が良いシチュエーションやコンディションというのが雪山にはあります。

ひとことでベースレイヤー(又はファーストレイヤー)と言っても、素材はウールに代表される天然素材やポリエステル、ポリプロピレン、アクリルなどの化学繊維があり、厚さも薄いものから厚いものまで、用途によってさまざまな製品が世の中に溢れています。
この膨大な製品の中から自分に合っている製品、もしくは必要な製品を見つけるのは至難の業といえます。
そしてベースレイヤー選びをさらに難しくしているのは、
「同じ日に同じコンディションで同じ製品を使用していても、人によって快適さが違う」ということです。
基礎体温、体感温度、汗の量は人によって個人差があるためです。
暑がりの人と寒がりの人、汗の量が多い人と少ない人、その時のコンディションや使用する人によって快適な素材や厚さは違ってくるということになってしまうのです。

前置きが長くなりましたが、このようにベースレイヤーの素材選びは難しい要因があるのですが
P.RHYTHMのベースレイヤーは POLARTECR POWER WOOL GRID 1素材のみをリリースしています。
ブランド力が無いために1素材しか生産できないというのが正直なところですが、1素材しか選ぶことができないが故に、雪山での使用する際に幅広く対応できそうな素材を採用しています。


1. POLARTECR パワーウールってどんな素材?
ポーラテック社が4年前から販売を開始したベースレイヤー素材です。
Power-Wool_Illust

肌に直接触れる裏側にウール、外気や他のウェアと触れる表側にはポリエステル配した “ハイブリッド(ダブルフェイス)構造” にすることでウールのデメリットを解消し、ウールと化繊のメリットをバランス良く融合することに成功しました。
ウール本来が持っている特性を残しつつ、耐久性・速乾性の高さ等の化繊の特性も兼ね備えています。


[POWER WOOL GRID 裏面(メリノウール):肌に接する面]
P-WoolGrid_Back1
パワーウールに使用している糸は15.5マイクロン(髪の毛の約6分の1の細さ)という超極細の “スーパーファインエクストラ・メリノウール” をグリッド(格子)状に編みこんでいます(グリッドの部分がメリノウール)。グリッド状にすることで、肌に接するタッチポイントから素早く汗を吸湿して、表面のポリエステル層に拡散します。また細かいグリッドのすき間に空気層ができるため、速乾性と保温性を高めることができます。
4シーズン前の発売当初は薄手(142g/屐砲離織ぅ廚任靴燭、17/18シーズンから現在のエクスペディション・ウェイト(153g/屐砲離織ぅ廚鮑陵僂靴討い泙后3謄哀螢奪匹大きくなり、よりストレッチするようになっています。   

[POWER WOOL GRID 表面(ポリエステル)]
P-WoolGrid_Face1
ポリエステルの一番の特徴は、親水性がないため汗や水分を素早く拡散して乾燥させる能力が高いことです。また天然素材のウールと比較すると強度に優れ、耐久性・耐摩耗性・耐ピリング性が高いことがメリットです。さらにパワーウールに採用しているポリエステル面は表面がフラットなため、生地自体の滑りがよく、他の素材とレイヤリングしてもライディングやハイクアップの際に身体の動きを妨げることがありません。

2. なぜウールを選ぶのか?
ウールにはウールだけが本来あわせ持っている特殊な機能がありますが、順を追って紹介していきます。
[天然の吸湿性]
ウールは湿気にさらされると親水性を発揮して汗を吸い込んで衣服内の湿度を調整する。
湿気や汗をウール糸の中に吸収するため、肌表面をドライに保つ、モイスチャーコントロール機能を備えている。
[体温調整機能]
ウールの糸事自体にたくさんの空気保持することができるため、熱を逃さない高断熱な素材あると同時に、快適な体表温度を保とうする働きが備わっている。
[ストレッチ性能]
ウールは繊維が「らせん状」になっておりっているため、繊維自体がバネのような働きをします。
非常に伸縮性が高く、シワにもなりにくい「天然のストレッチ繊維」である。
[抗菌防臭効果]
ウールは天然の防臭効果を備えています。羊毛自体には抗菌作用と強い防臭効果があり、嫌なニオイの元になるアンモニアガスや酢酸ガスなどを、発生から2時間ほどで99%近くまで減少させる能力を持っている。
化学繊維の抗菌防臭加工は使用回数や期間が限られてしましますが、ウールの場合は半永久的に効果が持続する。


3. ウールのデメリット
上記の通りウールが優れているところはたくさんありますが、ウールにも欠点はあります。
重大な欠点といえるのは3ほどあります。

1つ目は「チクチクする」
すること。これはウロコ状の “スケール” といわれている構造のもので、ウール繊維の周りに張り付いて覆っている。


ウール繊維を覆ってるウロコ状の “スケール" を拡大した写真
wool-1
スケールは文字通りウロコのように張り付いていて、不定形に並んでいるスケールの端は写真のように角張っていて、スケール自体は鋼鉄並みに硬い物質でできている。
この髪の毛よりも細い繊維の表面を覆っている構造のかけらの微小な角が、肌に当たってチクチクする原因なのだ。

2つ目は、「洗うと縮む」という問題。
洗うと縮んでしまうのはスケールが原因です。スケールは湿気を吸うと中の繊維が膨張して開く性質があり、スケールが開くことでより多くの水分を吸湿することが可能になるが、洗うと開いたスケール同士が引っかって絡みつき、ほどけないまま固まってしまう。

3つ目は、「強度が弱い」という問題。
一般的な羊毛の太さは40マイクロン(1マイクロン=1000分の1mm)ほどですが、1つ目のデメリットで説明したように繊維が太いほどチクチクするため、肌着には着心地を考えると繊維が求められる。
そこで羊毛の中でも細くて柔らかい毛質のメリノ種のウールが利用されるようになるのだが、メリノウールは20マイクロン以下の細さだ。
ウール繊維(糸)の太さと着心地は比例していて、繊維が細いほど柔らかく肌にもやさしい。
繊維が細くなるほど糸に紡績する際の手間がかかるため高価になる。
メリノウールは繊維の太さによって以下のようにランク分けされている。
太い方から順に
  1. 23〜25マイクロン      :ストロングメリノ
  2. 20〜22マイクロン      :ミドルメリノ
  3. 20〜21マイクロン      :ファインメリノ
  4. 18.5〜19.5マイクロン:エクストラファインメリノ
  5. 17.5〜16.5マイクロン:スーパー エクストラファインメリノ
一般的に肌着に使用されるのは、チクチク感や着心地を考慮して 4. エクストラファイン 〜 5. スーパーエクストラファイン ですが、ここで問題になるのが強度と耐久性です。
繊維が細くなるほど着心地が良くなるのですが、繊維(編糸)が細くなるほど強度が弱くなり、ウールの混率が高く着心地が良いものほど破れやすい製品になってしまいます。
数年前まではエクストラファインメリノを使用した肌着でも、脱ぎ着をする際に引っ張っただけでも破れてしまうことが多々ありました。
ここ数年はウールにポリエステルなどの化学繊維を混紡することで強度を高めた製品が販売されていますが、強度と耐久性という点では化学繊維の方が優れています。

4. P.RHYTM のベースレイヤーアイテム
ウールにもデメリットはありますが、P.RHYTHMのベースレイヤーに「ポーラテック パワーウール・グリッド」を採用している理由は、3つのデメリットをクリア(克服)しているからです。
  • 洗うと縮む → 防縮加工で縮む原因になるウール表面のスケールを取り除いているので、洗っても縮まない。
  • チクチクする → 防縮加工でスケールを取り除いていることと、パワーウールには15.5マイクロンの極細(スーパーエクストラファインメリノよりも細い)の繊維を使用しているため、肌に刺激を感じることはほとんどない。
  • 強度が弱い → ポリエステルジャージ素材の表面に、メリノウールを裏面(肌にあたる面)から編み込んだダブルフェイス構造のため、他の化学繊維の製品と比較しても強度が劣るということはありません。
  • さらに、肌に接しているウール繊維から表面のポリエステル素材に汗を吸い上げて、水分を拡散して素早く乾燥させることができる。ウールをグリッド状に配置した裏面は、隙間にデッドエアを溜め込んで保温性を高めるとともに、空気層ができることで汗の乾燥を促すことに繋がります。
長々と説明してきましたが、雪山で使用することを前提にさまざまな角度から考えてみると「POLARTECR POWER WOOL GRID」はベースレイヤーに最適な素材のひとつではないかと思います。

但し、P.RHYTHM outerwear のベースレイヤーは保温性を優先した厚手の1素材のみのラインナップになっています。
ある程度気温が低いコンディションでの使用を推奨します。


[製品情報]
19/20モデルから縫製工場が変わった関係で、型紙(パターン)を作り直しています。
サイジングは変わりませんが、さらに動きやすく着心地が改善されました。
カラーは昨年までのチャコールグレー系からネイビー系の新色に変わりました。


POWER WOOL GRID BASE CREW / PRM-20327
Size:XSw(Women's), S, M, L
Color:NAVY HEATHER ※1カラーのみ
Price:\15,000+TAX
PRM20327-01
[製品情報]
パンツも型紙を見直しし、足首まわりの縫製方法を修正しています。
裾部分の縫製を通常のステッチ入りの縫製から、生地を折り返してフラットシーマーで縫い合わせています。
昨年までのモデルと比較すると、裾の縫製がほつれにくくなっています。
股下丈を2cmほど長く修正しています。

POWER WOOL GRID BASE PANTS / PRM-20428
Size:XSw(Women's),S,  M, L
Color:NAVY HEATHER ※1カラーのみ
Price:\13,000+TAX
PRM20428-01

製品の詳細につきましては、オフィシャルサイトを参照ください。
Official Site → prhythmouterwear.com




余談ですが、実はウールの下着は寝間着がわりに最適だったりします。
汗は吸ってくれるし、対応調整もしてくれて、臭くもならない。
古くなったウールの下着をお持ちの方は、冬は寝間着として是非再利用してみてください。

注)今回の投稿にあたり、雑誌
「FALL LINE 2020 Vol.2- 行動着を考える - メリノウール再考。その特性から見る、化学繊維との使い分け 記事を参考にさせていただいた部分があります。
ご興味がある方は本誌をお読みいただくと、さらに理解が深まることと思います。


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